一心日記

愛媛・松山にある整体 一心庵の日記です。日々の事、身体の事いろいろと書いてます。

熱帯 謎解き 千一夜

なーるってならないですよ。

「なーる」とはなるほどっていう意味です。

森見登美彦氏の「熱帯」読破しましたが
あれあれ??って感じでした。

終わりの着地は相変わらずいいのですが
どんどんページ数が少なくなっていくのにあの人たちはどうなるの??
って疑問が解決していかないのです。
終わってしまった時にはその事は結局触れないままでした…
これはありなの??って思ってしまいましたよ。

さすがにこれはモヤモヤ感がありましたね。

なーるは熱帯に登場する白石珠子さんの口癖です。
そして、達磨の口癖。達磨イコール白石珠子さんって事なんでしょうね。

彼の小説は毎回のようにいろんな技法が駆使されていますが
今回は「千一夜物語」に関係するストーリーになっていて
その作品の中に物語の中に物語が登場し、その物語の中にまたもや物語が登場する
っていう感じの話があるらしくそういう作りになっています。

作中の中で物語のマトリョーシカって感じで説明されていましたが
熱帯はさらに登場人物がその中で被ってきてより複雑化しております。

第3章までは森見氏が病気になる前に書いていたらしく
その後しばらく書いてなくて最近ようやく書き終えたらしいのです。
そのせいか第4章以降はちょっとそれまで複線の回収を諦めたようなストーリーになっています。

それでも最後は彼らしい着地点を見出しているように思います。
やっぱりパラレルワールドなんです。そして僕はパラレルワールドが大好きなのです。


ここからはストーリーに入っていきますので読んでみようって思う人は読まないようにしてください。


冒頭は森見登美彦氏自身が佐山尚一著書「熱帯」という小説を過去に読んでいたのですが
途中まで読んで無くしてしまったという話から無くしたというよりも消えたという感じらしい。
ストーリーも読んでも読んでも話が追い付かない感じだとか…

とにかく不思議な小説だったとか。
その後、同じ小説を探そうしても何処にも置いてないらしい。
そんな不思議な「熱帯」という小説。

ややこしいですが僕が読んだ小説「熱帯」はその小説の中に佐山尚一著書の「熱帯」を
めぐる物語となっているのです。佐山氏実在しない人物です。
だけどね、面白い事にアマゾンで調べると出てくるのです。本は取り扱ってないとの事ですが。
そして、レビューも存在するのです。
そのレビューの中に池内氏のものがあります。
池内氏は小説の中の登場人物です。

つまりは出版社とアマゾンが仕込んだネタって感じなんでしょうね。
面白い事をするものです。

そんな不思議な熱帯という小説を途中まで読んだことがあってその続きを知りたいと
集まったメンバーがいます。
読んだことのあるメンバーが自分の読んだ部分を話し合って物語を繋ぎ合わせていく作業を
忘れてしまった部分を思い起こす作業をやっています。
それでも皆最後まで読んだことがないのだから結末までは辿り着けません。

そんな時にメンバの一人、千代さんが突如脱退します。
そして、京都へ。

実は千代さんは著者の佐山氏と知り合いだったのです。
そして、千代さんは失踪。
佐山氏も学生時代に著書を出した後に失踪したまま行方知れずとなっているのです。

メンバーの池内氏が千代さんを追いかけて京都へ。謎解きです。
その池内さんも失踪します。
仕事があるはずなのに会社に出社してないのです。

最後にメンバーに池内さんの紹介で入った白石珠子さんに
失踪先の京都から池内さんから彼のノートが送られてきます。

それで白石さんも京都へ。
新幹線の中で池内さんのノートを読むのですが
そこには池内さんの「熱帯」謎解きの過程が書かれているのですが
失踪するであろうところで小説の第3章が終わります。

ここまでは良かったのですが第4章からがちょっと複雑になっていきます。
解釈が下手な僕だから分からないのかな?って思っていたのですが
どうやらいろいろネットで調べていると同じように書かれている人がいましたから
やっぱり同じところで同じ疑問を抱えているという事は僕の問題ではないのでしょう。

第4章はいきなり小説の中の世界に。
僕という一人称で語られるのですがその僕というのは池内さんと思われます。
池内さんは謎解きの中で小説の中に入っていったと思われます。
こういうのが森見氏の小説の真骨頂なのでしょう。

ここはまだついていけるのですがただ僕は正直第4章も池内さんのノートの続きなのかと思っていました。
最後、読み終えてみるとノートの話は第3章で終わっていたのかな??
というのも池内さんが白石さんにノートを送った記述がないのです。
どの時点でノートを送ったのだろうか??ここは大事なところなはずなのに何の説明もないのです。
僕の読み落としなのかな??とりあえずもう一度第3章を後で読み返してみようと思います。

ここからは小説の中の世界に突入して「熱帯」の謎解きになります。
完成してない小説なのですが佐山氏の謎、周りの人の謎がいろいろとそれらが解明されていくと
小説が完成していき最後は「君の名は」的な感じで
僕が「佐山尚一」だと分かると世界が元の世界に戻るのです。
池内さんだと思っていた人は実は「佐山尚一」でした。
佐山氏著の「熱帯」の中に本人「佐山尚一」登場するのですが
池内さんらしき僕という人物が入っていった「熱帯」という小説世界の中にも「佐山尚一」が登場するので
僕=佐山氏とは思えなかったのですが途中から??おかしいぞ
僕が思い出す記憶がどうやら佐山氏の記憶になっているのです。
その辺が森見氏の面白い所です。

僕の解釈ですが最初に佐山氏が小説の中に入って僕となって小説の世界の中で彷徨っていたのですが
謎解きで池内さんが小説の世界の中に入ってきて玉突きで佐山氏が現実世界に戻ってきたのだろうと
思うのです。池内さんのノートの中に白石さん宛に
「私はこの手記があなたをみちびく白い小石となることを願うのです。しかしヘンデルとグレーテル
とはちがって、その小石はさらに熱帯の森の奥深くへあなたを誘い込むことになるでしょう。」
と書かれている事は白石さんもきっと熱帯の小説の中に入ってくる事が池内さんには想像できる
という事なのでしょう。

この二人のストーリーが割愛されてしまっているのでこれはどうなっているのだ??
ってところがさすがに今回の小説の残念なところだなって思ってしまうのです。

池内さんがどうなったのか?白石さんも入っていったのか?
白石さんが入っていったら玉突きで池内さんが現実世界に戻って
白石さんが取り残されるのか?また違う展開が待ち受けているのか…
白石さんは女性なので僕ではないし…

佐山氏が元の世界に戻ったと書きましたが実はちょっと違います。
よく似た違う世界に戻ったのです。パラレルワールドです。
佐山氏本人もそれは気づいています。

そして、最後に白石さんが沈黙読書会で森見登美彦氏が書いた「熱帯」という小説を紹介するのですが
不思議な装丁でと語られるのがまさに僕が今読んでいる「熱帯」の表紙でした。
そんな最後の締めくくりを読んでいるとなんだか不思議な感覚になりましたね。
ずっと物語の中の物語が続く不思議の小説の最後が今、自分の世界に降りかかっているように思えて
自分もこの世界に吸い込まれるような不思議な感覚を覚えましたね。

そして、小説の中の「千一夜物語」の最後の違和感についての一節を思い出してしまったのでした。

千一夜といえばスター千一夜って番組があったなーってしょうもない事を思い出してしまいました。
僕が思い出すのはそんなしょうもない事しかないですね。

こうやって感想を書いてみるとやっぱり僕は森見作品は好きなんだなって
思ってしまいました。きっとこれからみんな感想書いていくだろうから
僕が読み解けてなかったところ、もしくは誤解しているところが解明できると
きっともっと面白いと思えるのだと思います。